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自社整備増加も一因か

2022.04.21/カテゴリ:

相次ぐ左後輪タイヤ脱輪

ISOへの変更、道路形状、交換時期も原因

「ドライバー自身が点検正しく行うしかない」

 大型車のタイヤが脱落する事故が増えている。今年1月12日、群馬県の国道を走行中のダンプカーからタイヤ2本が脱落し、歩道を歩いていた男性を直撃。同月18日には、岐阜県内の中央自動車道で、大型車の左後方のタイヤ2本が走行中に外れ、1本が乗用車に衝突。乗用車に乗っていた2人が負傷した。国土交通省によると、脱輪事故の発生件数は、平成16 年から平成23 年にかけて減少していたが、その後は増加に転じ、平成30 年の事故件数は7年前の約7倍に増加している。

 

車輪脱落事故のうち、95%が左後輪

 

脱落事故件数のピークは11 月から2月にかけてで、事故はタイヤ交換など車輪脱着後1ヶ月以内に集中している。

令和2年に発生した車輪脱輪事故のうち、95%が左後輪だった。同省自動車局整備課によれば、「トラックが大きく旋回する右折時は、遠心力によりトラックの積み荷の荷重が左に大きく働き、左のタイヤに負荷がかかる。反対に、小さく旋回する左折時は、左後輪が回転しない状態で曲がることが多く、タイヤがよじれてしまう」ことが多いという。

さらに、「雨水などを排水するために道路の中心部は路肩に比べて3~4㎝高く作られている。車は常に左(路肩側)に傾きながら走ることになるため、右側のタイヤに比べ、左側のタイヤは積み荷の荷重がかかりやすい」

脱輪事故の原因の一つに、2010年以降、大型車のホイール規格が世界基準のISO規格へ変更されたことも上げられている。商用タイヤに詳しい㈱オートシステム(大阪府堺市)の東博明氏は、次のように説明する。

 

ISO規格に変更後、脱落事故が増加

 

「JIS規格では、右側のタイヤのボルトは右回し、左側のボルトは左回し。ナットはタイヤの回転方向と同じ向きに締め付ける。一方、ISO規格のボルトは左右とも右ネジだ。左側のタイヤのナットを緩める方向は、タイヤの回転方向と同じ向きになる。そのため、タイヤの振動などが伝わると徐々に緩みやすくなると考えられる。

国交省の統計データからも、ホイールがISO規格に変更になった年以降、脱輪事故が増加に転じている傾向が見てとれる。

また、東氏は、タイヤ交換時期も影響していると話す。

「毎年、スタッドレスタイヤへの交換作業は雪の降り始める時期に集中する。『明日、雪が降っている地域まで走る。今日中にタイヤ交換して』と頼まれ、徹夜で作業しているタイヤ屋も多い。慌てて交換作業を行えば、タイヤ脱落につながるようなミスも起こりやすくなる。反対に、スタッドレスからノーマルタイヤへの交換は、とくに慌ててやる必要はない。余裕をもって交換作業を行うため、脱落につながるようなミスも発生しにくい」と推測する。

また、ある関係者からは近年、運送会社が自社で整備するところが増えているが、タイヤ交換について正しい知識や技術を持っていない従業員がタイヤ交換することで、正しいタイヤ交換ができていないといった声も聞かれる。

 

ホイール付き大型タイヤは重量が100キロ

 

ホイール付きの大型タイヤは重量が100キロにも及ぶ。歩行者に直撃すれば被害は甚大だ。

タイヤ脱輪を防ぐにはどうすればいいのか。

物流事業者向けの安全研修を行う㈱TM安全企画(滋賀県大津市)の丸山利明社長は「脱輪事故を防ぐにはドライバー自身がタイヤ点検を正しく行うしかない」と指摘する。

「タイヤの交換作業を自社で行っているのに、営業所にトルクレンチなどの点検工具を常備していない運送会社も見受けられる。国やトラック協会が一生懸命規定を作って指導しても、点検が行われなければ事故はなくならない」とタイヤ点検の重要性を説く。

丸山社長が主催する研修ではタイヤの点検を行うこともあるが、その際、正しい方法で点検ができるドライバーは全体の半分ほどしかいないという。

「ほとんどのドライバーが、ハンマーでナットを叩きながら、その音を聞いて緩みを確認しようとする。正しくはナットに片手を添えてからハンマーで叩く。緩みがある場合、ブルブルと振動が感じられる」と話している。