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喫緊の課題は暫定税率の廃止だ

2022.06.10/カテゴリ:

1年で3240億円の軽油購入額増に!

 

フリージャーナリスト・本紙関東総局長

延寿寺幸次郎

 

トラック運送業界は、当面、文字通り「内憂外患」(ないゆうがいかん)の状況にある。

史上最高額の燃料価格、コロナの蔓延、人材不足、荷主企業からの運賃値下げ圧力――等々、枚挙に暇が無い。

筆者は、かねてから、「一般財源化」されてから久しい「軽油引取税」に関し、いまだに「暫定税率」が据え置かれているのは、至極、残念に思っている。

だから、「暫定税率廃止」の必要性について、改めて取り上げたい。

 

 

軽油価格は、今年度当初(昨年3月)に「115・1円」であったのが、今年2月6日には「136.7円」に高騰し、この間「21.6円」の急騰している。

 全日本トラック協会は「軽油が1円値上がりすると、業界全体で150億円の負担増となる」としており、昨年3月から今年2月までに、「3240億円」もの負担増になったことになる。

 

◆喫緊の課題は軽油引取税の暫定税率の廃止

なぜ、「軽油引取税暫定税率の廃止」が喫緊の課題であることは、これまでも、再三、本欄で取り上げて来た。

筆者がなぜ、この問題に固執しているのか?という点を読者の皆様には、脳裏に深く刻んで頂きたく、敢えて、今回も、取り上げておきたい。

「軽油引取税」は、ご存知のように、「本則税率分: 15円/ℓ」に「暫定税率分: 17.1円/ℓ」が加算され、実際には「32.1円/ℓ」となっている。これを、「1キロℓ」にすると「本則税率分: 1万5000円/1キロℓ」に「暫定税率分: 1万7100円/1キロℓ」が加算され、実際には「3万2100円/1キロℓ」となっている。

我々は、「軽油引取税」が「道路目的財源」から「一般財源」となって「13年」も経つのに、いまだ「暫定税率分上乗せ価格」で、「3万2100円/ℓ」で、ただ黙して購入しているのである。

自社の年間「軽油使用料」を計算して頂きたい。「本則税率分: 1万5000円/1キロℓ」だけで購入していたら、どれだけ、「年間燃料代」が削減できるのかが、判ることであろう。

 

◆暫定税率の廃止でと2560億円が浮く

 「暫定税率」は、「17.1円」であるが、軽油価格は、昨年3月の115.1円/ℓから今年2月6日の「136.7円/ℓ」ーーで、この間「21.6円/ℓ」値上がりしているので、全ト協試算の「1円上がると、業界全体で150億円の負担増となる」ことを勘案すると、何と「3240億円」の負担増になる。

だが、ここで、前述の「暫定税率分17.1円/ℓ」が廃止されれば、「1円上がれば150億円の負担増」になるところから、合計で「2560億円」は、リスクが軽減されるのである。

 

◆なぜ、業界挙げて軽油引取税暫定税率廃止に取り組まないのか?

この13年の間に、業界内には「暫定税率廃止」を叫ぶ声が挙がったことがある。しかし、そのいずれもが単発的で、成果は得られなかったのが事実である。

その背景にあるのが「運輸事業の振興の助成に関する法律」である。

その、「運輸事業振興助成交付金制度」の「趣旨」は次の通り。

軽油引取税の税率について特例が設けられていることが、軽油燃料とする自動車を用いて行われる運輸事業に与える影響に鑑み、当該事業の費用の上昇の抑制及び輸送力の確保に資し、もって国民の生活の利便性の向上及び地球温暖化対策の推進に寄与するため、当分の間の措置として、当該事業の振興を助成するための措置として交付される。

 

◎この仕組みを簡単に言うと、

①国は「地方交付税」として「一般会計」から47都道府県に「交付」する。

②この「交付金」の中から、各都道府県知事の判断で「都道府県トラック協会」に「交付」される。

➂この交付金を受けた「都道府県トラック協会」は、全日本トラック協会に「出捐(しゅつえんきん)を拠出するのである。

④②の「交付金」から「都道府県トラック協会」に、毎年交付されるのは、「約200億円」である。

⑤「交付金」から「都道府県トラック協会」に、毎年交付された「約200億円」のうちの25%前後が「全ト協」に出捐金として、拠出されている。

 

◆運送業界に「改革意識」はあるのか?

ここで、筆者が問題にしたい点は、次の2点に集約される。

一つ目は「運輸事業振興助成交付金制度」の中には、「〈当分の間の措置〉として、当該事業の振興を助成するための措置として交付される」――と明記されている点である。

「運輸事業の振興の助成に関する法律」が施行されてから「11年」も経つが「当分の間の措置」という「当分」とはいつまでなのか?ということである。

二つ目は、「軽油引取税」は、トラック業界から「6000万円」納税しているが、「運輸事業振興助成交付金制度」により、事業者個々でなく、全ト協への都道府県からの「出捐金」は「約50億円」というのは、余りにも「アンバランス」と言わざるを得ない。

業界内の有力筋には「業界は、運輸事業振興助成交付金を得ているから、軽油引取税暫定税率の廃止は切り出せないというのが事実だ」という見解がある。

これは、筆者から言わせるとあまりにも「近視眼的」と言わざるを得ない。

 

 

◆運送業者は働き方改革の適用控え、資金需要は高まるばかりだ!

 トラック運送業界は、「働き方改革」によって、令和5年4月1日から「月60時間超の時間外割増賃金率が、これまでの25%から50%に引き上げられる。

さらに、令和6年4月1日からは、「時間外労働の上限規制(年960時間)の適用」が行われる。

これからは、トラック運送業界は「資金需要」が高まるばかりなのである。

このような今だからこそ、「軽油引取税・暫定税率の廃止」に向けて、業界挙げて取り組むべきなのである。

 

 

 

 

※トラック情報社 物流新時代 提供※