事故原因の7割は安全確認不足
「側方衝突警報装置」の活用も
2月9日朝、大阪府泉佐野市で横断歩道を自転車で渡っていた女子高校生が左折してきた大型トラックにはねられ死亡した。警察は和歌山県橋本市に住む、トラック運転手を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕した。大型トラックの左折巻き込み事故が相次いでいる。昨年11月、東京都世田谷区で自転車に乗った30代の母親と生後8か月の乳児がトラックにはねられ、乳児が死亡。茨城県古河市で自転車に乗って通学中の女子高生が大型トラックにひかれ、意識不明の重体に。12月には徳島県小松島市で、10歳の女の子が大型トレーラーにはねられて死亡した。いずれもトラック(トレーラー)が左折の際、自転車や歩行者を巻き込んだことによる事故だった。
左折時に歩行者や自転車巻き込みやすい構造
交通事故の調査研究分析を行っている交通事故総合分析センターが令和3年4月にまとめた資料によると、事業用車両の左折巻き込み事故のうち、25%が大型トラックによるものだった。
トラックは乗用車に比べ、縦に横にも長い。乗用車などと比べ内輪差が大きく、左折時に歩行者や自転車を巻き込みやすい構造となっている。運転席は路面から離れた高い位置にあるため、車両の前後左右に死角となる箇所が多数生じてしまう。
特に運転席から見て左後方は、サイドミラーでしか視認できないため、事前に危険を察知し、十分な安全確認を行うことが難しい。
全日本トラック協会が作成した安全研修資料「交差点事故防⽌マニュアル」では、左折巻き込み事故の約7割が安全確認を怠ったものによるものだと指摘している。
同マニュアルではトラックの左折巻き込み事故を防ぐ取り組みとして「(キャビン内を)整理・整頓して視界を確保する」「事故リスクの少ないルートを走行する」「交差点進入前に安全確認する」「適切な軌跡で左折する」などを挙げている。
左折前にメーター確認し徐行してない
物流事業者向けの安全研修・コンサルティングなどを行っている㈱TM安全企画(滋賀県)の丸山利明社長は、「ドライバーの多くが左折前にスピードメーターを確認しながら徐行を行っていない」と指摘する。
「自分の感覚では時速10㎞以下に減速したつもりでも、実際は時速18㎞以上のまま左折してしまう場合もある」といい、「左折巻き込み事故防止の安全研修では、スピードメーターを確認しながら徐行するよう指導する必要がある」と話す。
国土交通省は令和元年10月、「道路運送車両の保安基準及び保安基準の細目を定める告示等」の一部改正を行った。
これにより令和4年5月以降に生産・発売される車両総重量8t超の大型トラックには、側方衝突警報装置の取り付けが義務付けられる。既存モデルの大型トラックについても、令和6年5月以降に生産・販売されるものは、同様の装置取り付けが義務付けられる。
なお、既に使用されているトラック(使用過程車両)は基準の対象外となっている。
警報装置はトラックが時速30㎞以下で走行中、車両左側の歩行者や自転車を検知するもので、ドライバーに光や音の警報を発する。接近を検知する範囲はトラックの左側面0・9mから4・25mの範囲だ。
既存のトラックに後付けできる製品
こうした大型トラックの側方衝突警報装置には、既存のトラックに後付けできる製品がいくつかある。
サイドミラーに固定するだけの製品で、社内整備士でも取り付け可能で、歩行者や自転車を検知するカメラは、夜間や悪天候時でも支障なく作動する。
全日本トラック協会の「安全装置等導入促進助成事業」も活用できる製品もあるので、検討していきたいところだ。

※トラック情報社 物流新時代 提供※