「追突を予見できるかどうか」がポイントに
近畿交通共済「事故処理ノート」より
令和元年中に発生したトラックの人身事故15606件のうち、 追突事故が6875件と最も多く、全体の44・1%を占めた。事故原因の多くはわき見運転などドライバーの不注意によるもの。追突事故の加害者は前方不注意を問われるため、過失割合が加害者100対被害者0になるケースもある。いわゆる「ひゃくゼロ」で事故の補償を行うのは精神的にも金銭的にもきつい。


事業者向け自動車保険を取り扱う近畿交通共済協同組合のホームページには、実際の事故解決事例を「事故処理ノート」として紹介している。今回、そこから2件の追突事故について取り上げたい。
午前7時頃、高速道路のETCレーンを走行していたトラックの前方に、乗用車が車線変更してきた。ETCゲートの開閉バーが上がらなかったため、乗用車は急停止し、トラックは乗用車に追突した。乗用車は料金所の手前でETCカードを挿入し、
一般レーンからETCレーンに車線変更してきた。
この事故では過失割合について裁判が行われた。裁判所は「乗用車がETCゲート開閉バーの手前で停止することは予見できた。トラックは前方を注視、減速して車間距離を保持することを怠った」とし、トラックの過失が大きいと判断した。乗用車がゲート手前でETCカードを挿入していたこと、急な車線変更、急停止をしたことは考慮されなかった。
「高速道路での急停止とは異なり、ETCレーン内では前方の車が急停止することもある。後方のトラックは追突事故を予見できた」と判断された。
午前10時頃、信号のない交差点で、右折レーンを走行していたトラックの前方に別のトラックが車線変更してきた。トラック同士が接触し、追突されたトラックは横転した。
この事故は、過失割合について交通事故紛争処理センターで交渉が行われ、当初判断された過失割合は、追突したトラック100に対し、追突されたトラック0だった。
しかし、追突したトラックが事故現場を写真撮影していたため、それをもとに事故を再検証したところ、追突されたトラックが、追突したトラックの直前に割り込むような形で車線変更していたことが判明。追突されたトラックの右端最後部と、追突したトラックの前部中央付近が、それぞれ損傷していることも割り込みによる衝突を裏付ける証拠となった。
最終的に交通事故紛争処理センターから出された示談あっせん案は、追突したトラック25に対し、追突されたトラック75の過失割合だった。
ここで注目したいのは、どちらの事故も前方に割り込んできた車への追突だが、判断された過失の割合は正反対という点。ETCゲート手前の追突事故についての裁判所の判断が示す通り、「後方のトラックが追突を予見できるかどうか」がポイントになる。ETCゲート、踏切、横断歩道など前方の車が急停止することもある場所では減速、車間距離の保持などを心掛けたい。