管理者の労働時間、費用の削減に
「対面と比べても支障ない」
昨年4月から、「遠隔点呼」に関する規制が緩和された。遠隔点呼は、本社と各営業所などの遠隔拠点間でも点呼が可能となる制度。管理者が本社におれば、営業所は無人でも良い。運行管理者が対面で行っていたドライバーの健康状態の確認などを、パソコンなどのIT機器を介して非対面で行う。通信機器を扱う事業者によると、「車両100台以下の事業者の37・5%」が遠隔点呼申請の承認を受け、実際に運用しているとのことで、大きな広がりを見せている。

西部運送㈱の遠隔点呼の様子(西部運送㈱HPより)
緩和後は、Gマークなどの優良性不要
以前は、遠隔点呼を導入できるのはGマークを取得した事業所に限られていた。また、遠隔点呼を活用できる範囲も「同一企業内」に限定され、グループ会社間などは対象外とされていた。しかし、緩和後は、導入の要件として、Gマークなどの優良性は問われないほか、グループ企業間の点呼も遠隔で行える。
遠隔点呼を行うには、「実施要領に規定された機能を備える点呼システム」を導入し、遠隔点呼を実施する側、実施される側の各拠点が「施設・環境要件を満たす」必要がある。
ドライバーを撮影するカメラは、200万画素以上かつフレームレートは30ftp以上、運行管理者等が使用するモニターのサイズは16インチ以上かつ1920×1080ピクセル以上の解像度(望ましい)などの要件だ。
こうした要件をクリアし、所管の各運輸支局へ申請書を提出し、承認を受ける。
国土交通省自動車局安全政策課の担当者によると、申請書類の入手や申請の準備期間を除き、通常、申請から遠隔点呼の運用開始まで1カ月程度はかかるという。
遠隔点呼時間帯 朝4時~8時が最も多く
通信機器やシステム開発・販売などを行うテレニシ㈱(大阪市)は、昨年10月、遠隔点呼の申請が受理された顧客について実態調査を実施。調査結果によると、「従業員100人以下の事業者の25%」「車両100台以下の事業者の37・5%」が遠隔点呼申請の承認を受け、実際に運用している。
また、遠隔点呼を行っている事業者の50%以上が「本社を除く事業所数が1~5カ所」で、中小運送事業者でも遠隔点呼の導入が進んでいることがうかがえる。
国交省が「令和4年度第2回運行管理高度化検討会」でまとめた「遠隔点呼の運用実態調査」(昨年7~9月にトラック・バス・タクシーなど23事業者を対象に実施。うち16事業者が回答)によると、遠隔点呼が行われている時間帯は「朝4時~8時が最も多く、全体の約35%。次いで夜20時~0時の間19・5%」だった。
早朝と深夜が全体の約6割を占め、ほぼ全社にあたる15社が「運行管理者の負担が減った」と回答している。
今年1月から、センコーはグループ企業を含む計8拠点で遠隔点呼業務を行っている。遠隔点呼導入前と比べ、管理者の労働時間は平均20%削減されたという。
パート管理者のコストが浮いている
また、今年2月から、西部運輸では遠隔点呼をすべての支店と営業所に導入した。日中の点呼は従来通り、支店・営業所ごとに対面で行うが、夜間と早朝については、出発前と業務終了後を遠隔点呼に切り替え、本社に集約している。
同社安全指導部の占部氏は、「本社では2人の点呼者が支店や営業所のカメラの前に来たドライバーと、パソコン画面を通して向き合い、健康状態の確認やアルコールチェックを行っている。
早朝は点呼を受けるドライバーの数が多くなるが、今のところ運行に支障をきたすような点呼待ちなどは発生しておらず、健康状態の確認も対面とほぼ変わらない精度で行えている。
費用対効果(コスパ)についても、これまで早朝・深夜の時間帯に雇っていたパート管理者のコストが浮いている。遠隔点呼の導入コストは数カ月~1年以内にペイできると試算している」と話している。
また、占部氏は「3~4箇所の拠点へ遠隔点呼を導入する場合でも、同様の費用対効果は見込めると思う。中小の運送会社でも導入は可能だ」と薦める。
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